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[不動産トレンドNEWS]
【インスペクション説明義務化 直前企画③】発祥の地アメリカ、普及までの紆余曲折に学ぶ

2018-03-27

4月からのインスペクション(建物状況調査)説明義務化を前に、不動産コンサルタント長嶋修がその制度の注意点、予想されるトラブルまで解説する、直前企画の最終回です。最初からお読みになる方はこちらから。


インスペクション発祥の地アメリカ、普及までの紆余曲折


ホームインスペクション発祥の地は米国であり、州によりますが不動産取引の7090%の割合でインスペクションが行われています。調査会社、IBISワールドの「Building Inspectors in the US」によれば、戸建てやコンドミニアム、商業ビルなどまで含む広義のインスペクション市場規模は、米国全土で約3745億円(20171ドル=107円換算)、経常利益は924億円。市場が生み出す雇用者数は41853名、賃金総額は1286億円です。


収益物件(商業ビル)が全体の19%程度を占めるので一概に比較できないとはいえ、市場規模の算定すら困難な日本とは比べ物になりません。2012年から17年の平均伸び率は4.6%で、今後5年間の平均伸び率は1.4%と見込まれている。米国ではすでにインスペクションが常識化しているため、その伸び率は不動産市場のそれと同等です。


 アメリカのインスペクション市場


IBISワールド「Building Inspectors in the US」 18年以降は予測値


今後、日本が米国と同様の「住宅ストック社会」に移行するなら、人口動態に対応した「インスペクション市場」が成立しなければならないはずです。米国と日本の人口比率はほぼ2.51なので、単純に人口で割れば、日本のインスペクション市場規模はおよそ1,500億円。


しかし米国でも、インスペクションが根付くのはそう簡単ではありませんでした。5060年代には多くの新築が造られましたが、70年代に入ると当時の新築が中古市場に出回るようになりました。このとき、各地で自然発生的にインスペクションが始まったものの、それぞれ独自基準で行われていたため、トラブルも散見されました。そこで、76年にはインスペクションのスタンダードを創る目的で「アメリカホームインスペクターズ協会」(ASHI)が創設されます。このころの米国はまだ新築住宅が主流であり「中古住宅はよくわからないから不安だ」といったユーザーの声が多かった時代です。


やがて80年には徐々に中古住宅市場整備が始まりましたが、本格化したのは90年代後半に入ってからで、米国が現在のように中古住宅流通主流になったのは90年代後半。インスペクションも同様に、本格普及したのは90年代後半で、そこからまだ20年程度しか経過していません。


不動産仲介業者によるインスペクターの紹介禁止


インスペクション普及期には、前回ご紹介したとおり「ホームインスペクターと不動産業者との癒着」といった新たな問題も勃発。そこで2001年にはマサチューセッツ州において、不動産仲介業者によるインスペクター紹介が禁止されたのを皮切りに、多くの州で不動産業者によるインスペクターの紹介は禁止するか、複数のインスペクターを紹介する決まりとなっています。「ホームインスペクターの選び方」といったメディアの記事には「ホームインスペクターは自分で選ぶこと」といったセオリーが記載されていることが多いようです。


前述の通り日本では現在「インスペクション説明義務化」において、どちらかといえば売主主導で、しかも不動産業者がインスペクターを紹介(あっせん)するといったスタイルのインスペクションが促進されようとしていますが、このスタイルで成功した事例は世界のどこにもなく、このまま定着する可能性は低いとわたしはみています。


実際問題として、中古住宅を売り出す前に、コストをかけてインスペクションを行う売主がどの程度存在するでしょうか。ましてやあらかじめ瑕疵保険をつけるとなるとハードルはさらに上がります。なぜなら、瑕疵保険をかけるためには、中古住宅のかなりの割合で、必要に応じて基礎や壁のひび割れ補修、バルコニーなどの防水、旧耐震なら耐震診断や補強などを施す必要がありますが、自宅がいつ、いくらで売れるかわからない売主にこうした費用を負担させるのは無理があるでしょう。「瑕疵保険がついているから安心ですよ」といった消費者保護的な販売手法は、新築では成立するものの、個人が売主である中古では通用しない可能性が高いと考えます。


インスペクションがリスクヘッジとして機能するには


インスペクションは、売り手・買い手にとってはもちろん、不動産仲介業者にとってもリスクヘッジになります。なのに売主主導のインスペクションが普及しなかったり問題が起きるのでは意味がありません。売主が事前にインスペクションを行わないであろう多くのケースでは「買主主導でのインスペクション」を行うこと。そしてインスペクターはあくまで買主に選ばせることをお勧めします。リフォーム会社や引っ越し屋・プロパンガス業者を紹介すれば紹介料が受け取れる「バックマージン文化」は不動産業界では常識ですが、インスペクションにバックマージンをからめれば紹介責任が発生し不動産仲介業者のリスクヘッジにはならないでしょう。


また、中古物件購入に際し、インスペクションを希望される方は、ご自身で信頼できるインスペクション会社を選ぶことをお勧めします。売買の利害関係のない第三者の目できちんと見てもらうことで初めて「中古住宅のコンディションを正確に知る」というインスペクション本来の機能が約束されます。

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