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[不動産トレンドNEWS]
【対談レポート】田原総一朗氏×長嶋修が日本経済とマンション・住宅市場を語る(後編)

2018-12-30

日本経済、日本のマンション、住宅市場はこれからどうなっていくのか、どうあるべきか。日本を代表するジャーナリストの田原総一朗さんがさくら事務所創業者で、新刊『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』の著者、長嶋修に切り込む対談。日本の住宅施策から都市のあり方へとまだまだ続きます。


前編はこちらから


マンションはひとつの村


(長嶋) マンションは1つの村みたいなものなんです。1つのタワーマンションだと500世帯ぐらいが入っていて約1,500人が住んでいます。


お金のこととか、いつ引っ越すとか、結局みんながほぼ100%合意しないと物事は進みません。法律上は5分の4の賛成があれば建て替えができることにはなっていますが、少しでも反対する人やお金を出せないという人がいると事実上できなくなります。


日本の民主主義がうまく機能してきたとも思いませんが、小さい村のようなマンションの運営について、これまで誰も問題意識を持ってきませんでした。これからはちゃんとやりたいねというのが、この本の趣旨です。


(田原) マンションの運営について意識がなかったというのは、どういうこと?


(長嶋) マンションの管理は、管理会社が勝手にやってくれるものだと思われていました。管理会社は本来、田原さんのようなマンション所有者が構成する管理組合が使っている相手先でしかありません。しかし、いつの間にか管理会社がすべてをコントロールするようになりました。なぜなら、住人たちがあまり関心を持たなかったのをいいことに、やりたい放題だったからです。3億円の工事で終わるところを平気で5億円の見積もりを出したりすることがありました。


(田原) その現状に対し、長嶋さんが本を書いて、「お前らめちゃくちゃだ」と指摘した。


(長嶋) そうですね。さらにうまくやっているマンション管理組合の事例を紹介しています。日本のマンションの価値が維持されることで、ひいては日本経済の土台となるような状況にまで持っていきたいと思います。もっとも、すべてのマンションは救えません。田舎や郊外のバス便で行く物件は、どんなに手入れをしたって限界があります。


(田原) 人口減少、少子高齢化で一番のダメージを受けるのは地方自治体。僕はいくつも地方自治体を取材して、シンポジウムをやっています。ほとんどの地方自治体の経済が悪化している。経済が悪化して出生率が下がる。若い世代はどんどん出ていく。東京、名古屋、福岡へと。地方自治体の人口はどんどん減少する。するとマンションや家の値段が下がるのは当たり前。


街を縮めるしかない


(長嶋) できることがあるとすれば、町を思い切り縮めることだけです。すべての地域を助けることは無理なので、誰かが悪者になってメリハリをつけるしかありません。マンションもそうなんです。だめなマンションは早く見限って、みんなでいいほうに移りましょうという政策をそろそろ取る時期だと思います。


 マンションは共同住宅だから何でもみんなで話し合いしないと先に進みません。高級マンションはいいですよ。なんだかんだ言ってもみんなお金を持っています。後でお金が足りなくなっても、結構ちゃんと出せちゃったりします。しかし、普通のマンション。いろいろな方が住んでいらっしゃいます。お金を出せる人もいれば、出せない人もいる。「建て替えちゃえ」と言う人もいれば、「いや、もう私はここでずっと死ぬまで暮らしたい」と思っている人もいます。全くまとまらなかった結果、全国で270戸、年に10件ぐらいしか建て替え事例がないということなのです。


 東京都は、マンションの建物が古くなってきたので、知事が特定の場所について容積率を緩和する政策を打ち出しています。ついてはその場所をどこにするか、都に上げてくださいと呼びかけています。東京都は国よりも進んでいる面があります。


(田原) 東京は放っておいても地方から人が集まってくる。一極集中。だから東京はいいだけ。日本の悪いところは、企業が国家と組まないとうまくやれなくなっていること。大阪をはじめ地方の経営者は、東京に本社を移す。アメリカやイギリスの企業は地方に本社を移転させているというのに。一方で、東京は全国で一番出生率が低いという問題がある。圧倒的に低い。


(長嶋) 人を集めておきながら、出生率を下げてしまっています。最近の若い人たちは、駅からの距離を非常に気にします。その理由の1つは車を持ってないから、もう1つは共働きだからです。部屋の広さや快適性よりも駅から近い方を優先します。駅徒歩15分の50平米より、駅徒歩3分の35平米でいい、そんな感じです。


 東京の都心も駅から1分離れると、平米当たり18,000円ぐらいずつ下がってしまいます。品川や渋谷、新宿のような都心部でも、駅からの距離で格差がものすごく広がっています。


積立金ぼったくり問題


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(長嶋) ここで「積立金ぼったくり問題」です。これまでマンションの管理会社が、12年目などの時期が来ると、大規模修繕の見積もりを勝手に送ってきました。管理組合が頼んでもないのに。3億円とか5億円とか、結構高額な見積もりなのですが、管理組合はそれを鵜呑みにしてきました。


 でも、それはあまりよくないということで、コンサルタント会社というのが出てきました。さくら事務所もその1つです。建物について具体的にどんな修繕がふさわしいかをチェックしつつ、3社ほど工事業者の見積もりを取らせ、もっとも適正でリーズナブルな工事業者に依頼するように、仕切りをするのがコンサル会社です。


 この仕切りをするためには、何回も行き来して1年ぐらいの時間がかかります。最低でもコンサル料500万円~600万円、場合によってはもう少し必要になります。ところが、ここ4、5年、非常に安いコンサル料で受注をしてくる会社が出てきました。


うちが600万円、700万円で入札しようとするところを、200万円とか300万円で応募してきます。マンションの管理組合は、安いほうがいいのでそちらに行ってしまいます。


 では、その会社はどこでもうけているかというと、実は裏で工事会社とつながっているのです。一応A社、B社、C社と3社の見積もりを出すことが多いですが、今回落札するのはA社だからと談合を行います。


A社は8,000万円、B社、C社は1億円ぐらいと見積もりを出します。そうすればA社になるに決まっています。A社が落札を無事できたら、A社からだいたい10%、多いところで20%のバックマージンをもらいます。


 1億円の工事だったら最大2,000万円がコンサル会社がもらう仕組みになっているので、コンサル料はただでもいいというぐらいのもうけ方をします。こうしたやり方が横行しまして、これはまずいと、去年、国土交通省が通知を出し、こんな悪質コンサルがいるから気を付けてとアナウンスをしました。


 意識の高いマンション管理組合の人たちは、こうした国の通知をとても気にしますが、アナウンスがあった後も、悪徳コンサル会社は普通に営業しています。何でそれができるかといえば、この問題に無関心な住民たちはアナウンスを読まないからです。そんなこともあって、本書でも注意喚起をしています。


(田原) ところで少し質問。マンションは何歳ぐらいで買うのがいい?


(長嶋) 何歳でもいいと思います。例えば若い人。いつか家を買おう、マンションを買おうと思っている人は、理屈の上では早ければ早い方がいいと思います。なぜなら住宅ローンがより早く終わるから。


(田原) でも、僕らの世代は、早く買った人はみんな失敗した。


(長嶋) 田原さんの世代が家を買われたころって、60年代とか70年代とかですね。


私は10回も引っ越ししました


(田原) 1963年、初めて建て売り住宅を買いました。でも1年で失敗。それでまた買って。1年たってまた失敗。また買った。2回引っ越ししました。


(長嶋) 何が失敗だったんですか。


(田原) そのころは給料が安かった。安いところしか買えない。だから埼玉県の蕨に買った。


(長嶋) 当時、会社員の給料は1万円ぐらいですね。


(田原) 1万円なかった。それで蕨に買った。そうしたら残業が多くって、帰りのタクシー代がとんでもない金額になる。それで今度はもう少し近い東京・北区の十条にした。


(長嶋) ええ。すこし南ですね。


(田原) でも、そこは建物が悪かった。


(長嶋) 欠陥だったのですか。


(田原) 欠陥。何度も何度も失敗した。早く買えばいいというものじゃない。


(長嶋) まあ、どんな家を買うかが大事です。最近は以前に比べ欠陥住宅は減ってきています。それにしても10回も引っ越しされるってすごいです。昔、朝日新聞がキャンペーンしていた「住宅すごろく」より早いな。1970年代ごろ、最初は小さく買って、だんだん大きくし、最後は郊外の白い一戸建てに住む。


(田原) それが大間違いだった。僕が買ったやつはみんな大失敗。


(長嶋) うちの親とかもそうですけれども、1970年代までは、どんどん不動産価格が上がっていったので、今買わないと買えなくなっちゃう。そういう恐怖感みたいなのがあったのでしょうね。それをメディアがあおっていた。でも当時は実際に住宅不足だったので。しかも不動産価格がどんどん上がってしまった。給料との折り合いがつかないような状況もありましたし。だから遠いところに買うしかなかったのですね。郊外の典型的なベッドタウン、柏とか大宮などですね。


(田原) ベッドタウンは今、全部だめだ。


(長嶋) ベッドタウンにある、すこし駅から遠いマンションというのは本当に大変です。正直、救いようがないと思います。


(田原) でもこのベッドタウン、朝日も読売も毎日も全部大推薦した。


(長嶋) 悪気があってやっていたんですかね。


(田原) 悪気はない。無知なの。


(長嶋) 最近の国交省官僚は結構頑張っています。彼らがうまくバトンをつないで、ここ数年間の国土交通行政は随分よくなりました。ホームインスペクションを説明義務化したとか、住宅のデータベースを今年度中に稼働させますとか、ここ数年の動きはとてもいいと評価しています。現場の人たちが頑張っているという話ですが。


日本の新築信仰と住宅総量規制


――ここで会場から質問を募ります。


(問) 住宅の総量規制に絡む質問です。総論では賛成しても各論で反対する人が多いのではと思います。日本の新築志向の根強さと、また例えば関西で万博でも誘致されたらマンションも含めていろいろな開発が始まってしまうようにも思います。その辺りの展望を伺いたい。


(長嶋) まず日本の新築信仰というのは戦後の高度成長期につくられたもので、歴史が浅いものです。戦前は、東京のような都市部の持ち家率は10%しかありません。ところが、戦後の高度成長の過程で田舎から出てきた人たちがいい家に住もうとすると、新築しかなかった。住宅の性能も、時が経てば経つほど良くなっていったので、新築はいいよね、ということになっていった。


 昔のアメリカも同じでした。アメリカは1950年代ぐらいから高度成長が長く続いて、当時は誰も新築ばかり求め、中古ってよく分からないなと言っていました。それが70年代頃になって、当時の新築が中古市場に出てきました。そしてインスペクションが始まったりして、中古市場が充実していきました。日本はそれから何十年も経って遅ればせながら同じことをやろうとしています。


 住宅総量規制の話ですが、規制と言うとネガティブなイメージになりますが、日本以外の国がやっているような住宅総量管理をすればいいということです。この管理をきちんととやれば、結果的に新築が減ることになります。すると、景気が悪くなるじゃないかという声があります。


新築を造ると景気が良くなるという話は、シンクタンクなどから判を押したように出てきます。5,000万円の住宅が売れれば、巡り巡って1億円の経済波及効果があるという理屈です。人口が増えているときは成立したかもしれないですが、今は造ったそばから価値が下がってしまっています。1戸の家ができれば、1戸の空き家が増えてしまいます。すると、空き家を自治体が管理する費用はどうなのとか、町全体が毀損してしまうデメリットは算出しないのかという論点が出てきます。


 さらに中古住宅を大事にしてずっと住み続けられる状況をつくれれば、各家庭が資産を持つことになります。この新たな資産効果も生じるはずです。しかし、こうしたことを研究している日本の経済学者は1人とか2人しかいません。だからまずは経済効果の見直しから入るべきだと思います。


新築か中古かという話ではなく、まず住宅総量を管理して、日本経済にとってどんな不動産市場が望ましいかという新たな認識をつくる必要があると思います。


 


(問) 悪質なコンサル会社と優良なコンサル会社をどこで見分ければいいのでしょうか。


(長嶋) 非常に見分けづらいです。皆、やさしい顔をしてやってきます。コンサル会社を選ぶとき、3社ぐらい話を聞くのがいいと思いますね。すると明らかに安さの違いが分かります。倍くらい違いますから。それできっと1つは見分けられます。もう1つは、見積もりを出す場合でもコンサル会社に3社とも選ばせないで、1社、管理組合推薦の会社を入れればいいと思います。そうすればその段階で談合ができなくなります。


 もう1つは100年マンション 資産になる住まいの育てかたにも書きましたが、修繕工事のいくつかの方式のうち、プロポーザル方式を採用することです。コンサル会社が工事会社を勝手に選ぶのではなく、業界誌などに工事の情報を出します。すると向こうから見積もりが送られてきます。プロセスをすべて透明化するというやり方です。これならば談合は基本的に起こりません。




田原さんのお話で日本の住宅の課題は、高度経済成長期からの日本の成長による価値観、環境の変化と大きく関わりがあることが改めて実感したのではないでしょうか。


本対談で生きるマンション・淘汰されるマンションに関心を持たれた皆さんは、不動産三極化時代に資産となっていくマンションへと育てる指南書100年マンション 資産になる住まいの育てかたをぜひご一読ください。

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